誰よりも優しかったあの人。
自分のことより相手のことを優先する。
くだらない話に頷いて、傍にいてくれる。
何事にも一生懸命で、諦めない。
人が泣いているとき、苦しんでいるときに自分のことのように思って
自然と涙を流しているような。
誰よりも強くて、誰よりももろかった。
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なんで自分を優先して、わがままで強く生きる人ばかりがベッドの上で死ねるんだ。
穏やかに死ねるんだ。
なんで優しい人は「ごめんなさい」と言いながら死んでいくんだ。
泣きながら死んでいくの。
傷つきやすいからこそ、人の感情が分かるからこそ、人に優しくできる人たち。
あなたの優しさを足元に、善人の皮をかぶって近づいてくるやつがいる。
偽りの笑顔で、何の感情もなく殴って来るやつがいる。
あなたが持つ優しさは当たり前じゃない。あなただから天が授けた贈り物。
あなたがいなきゃこの世界はもうなくなっている。
なのに世界は冷酷で、優しくて一生懸命な人から排除していく。
どうしてと問いても、答えはどこにも見当たらない。
排除しようとする人の声ばかり、届いてしまう。
あなたを求め、ずっとそばにいてほしいと願う人の声が届かない。
傷をえぐる言葉は無視してほしい。
でもできないんでしょう。優しいから。人が好きだから。全部受け入れてしまう。
あなたがこの世に諦め去っていくとき、私に生まれる途方もない無力感。
ふいに思い出しては責任感もない涙がいつの間にか、干からびている。
あなたをこの世に留める言葉を、気持ちを、態度を、十分に伝えるのは難しいかもしれない。
それでも、いてほしい。同じ空の下で息をしてほしいだけ。
自分勝手でごめんなさい。もう私もあなたも謝らなくていいんだよ。